いつも目で追っているのは造形。
お洋服を買う時も、日用品を買う時も最後の決め手になるのは造形。
雑誌を開けば商品はもちろん、お料理の盛り付けやスイーツの上の凝った飾り見て楽しみ、知らない街でも知ってる街でも、時間があれば歩き回って自然と造形を探しています。
建物や門の装飾、凝った街灯。
お店の内装はもちろん、ショーウィンドーの商品だけじゃなくて、壁紙やモニュメントの組み合わせ。
面白いもの、美しいもの、きれいなものを見つけたらとても嬉しくて。
私にとって世界は、魅力的な造形に溢れていて、飽きることがありません。
だから私も自分自身で造形という形で作品を生み出すことをしているのかもしれません。
直線は格好良く、曲線は表情豊か。
緩やかであれば穏やかさを、急であれば強さを感じます。
太いものや細いものだって。
それらが連続したり、交差したり、組み合わさって。
線が一本あるだけで何か物語が生まれそうなそんな想像が楽しい。
平面もいいし、立体はさらに表現の自由度が高くて面白い。
そこにある、という存在感。
どこから見ても成り立つように、バランスをとって形になっていく緊張感。
私の作品の多くは「蜜蝋鋳造技法」を用いて制作しております。
この技法の特徴であるひき目模様の入った曲線がとても好きです。
金属に命を吹き込まれたかのような繊細かつ優しい華やかさを感じます。
どちらかといえば、私の作品は主張するタイプではありません。
しかし、これらの特性が上手く作用して、「主張しない、でも惹きつけられる」という魅力を授けてくれている様に思います。
初めて個展を開いたときのことです。
遠方から来てくれた友人が真剣に作品を見て、とても似合うものを一点ご購入くださいました。
そしてその後、こんなメッセージをいただきました。
「あれから、私も好きなことしよう!って思って、小さい頃から好きだったことを始めたの。貴方の作品にお供してもらってるよ!」
このメッセージをもらってから、作品を作る時の心構えが変わりました。
「自分を表現する」のはもちろんだけど、「これから出会う誰かのために」も、と。
「美しいもの、きれいなもの」を作りたい。
そのためにはどうしたらいいのだろうか?
この繊細で優しい華やかさを最大限に引き出し、かつ、魅力的な造形にするにはどうしたらいいのだろうか?
そんなことを日々考えながら製作しております。
蜜蝋鋳造技法とは
蜜蝋鋳造技法は明治時代以前から鋳金技法の一種として、佐渡地方を中心に代々受け継がれてきた伝統技法です。
金属製の置物などを作るのに用いられてきましたが、ジュエリーに取り入れられるようになったのは昭和の後期頃から。
佐渡出身の金工家であり、東京芸術大学工芸科の教授でいらっしゃった故・宮田公平さんが中心となって作品を発表されてきました。
蜜蝋鋳造技法の特徴であるのひき目模様の出し方、ジュエリーに使えるような軽さとデザインのバランスの取り方が難しいこともあって、この技法を用いてジュエリーを製作する人は今ではごく少数です。
※鋳金(鋳造)とは、砂や石膏で作った型の中に溶かした金属を流し込んで金属を加工する方法の一つです。金属製の調理器具やカトラリー、置物、機械の部品などもこの方法で作られています。
蜜蝋鋳造技法の特徴
貴金属を用いたジュエリーでは、鋳造工程で金属を流し込む型を作る際に、パラフィンワックスで原型を作ることが一般的です。
蜜蝋鋳造技法も原型の作製に蜜蝋を使う点を除けば、方法に大きな違いはありませんが、出来上がるジュエリーで表現できるものに大きな違いが出ます。
パラフィンワックスには彫りなどの加工を施すことができるため、動植物や楽器などをリアルに表現することが可能です。また、デザインによりますが同じものを大量に製造する事が可能です。
これに対し、蜜蝋は彫りなどの加工が適さないためリアルな表現はできませんが、引き延ばす事によって特徴的なひき目模様が生まれることにより様々な表情を持ったパーツを作る事ができるため抽象的な表現を得意とします。
鋳造に耐えるギリギリまで薄く引き延ばした蜜蝋で様々な曲線作り、組み合わせて空間を意識したデザインにすることによってボリュームを感じさせつつも、身に付けたことを意識させない程の軽さに仕上げる事が可能です。
その結果、作品には金属に命が吹き込まれた様な繊細かつ優しい華やかさが生まれ、また身につける方に溶け込むように馴染み、その方の素敵な部分を自然に引き出します。
これがお客様にご支持をいただいている大きな理由だと考えております。
製作過程1:蜜蝋をひく
蜂の巣から採れる蜜蝋と松の木から採れる松脂。
これらを混ぜて溶かし、人肌にまで冷ますと粘土のように形を作ることができます。
この状態でゆっくり静かにひっぱると、独特のひき目模様が現れます。
これらは一つとして同じ模様となることはなく、たまに息をするのを忘れるほど真剣にひいていきます。
鋳造に耐えられるギリギリを見極めながらできる限り薄く、また、幅や長さの違うものもひいていきます。
製作過程2:形を作る
まとう方、デザイン、シルバー…
全てが調和し、まるで一つの音楽を奏でるように、と緩やかに曲げたものや急に曲げたもの、太いものや細いものを連続させたり、交差させたりして形を作っていきます。
ひき目模様の美しさや形の美しさだけでなく、完成した時の重さにも気を配ります。
また、身につけた時に行動を制限する部分はないか、十分な強度があるか等も考えながらデザインと実用性のバランスを見極めていきます。
製作過程3:蜜蝋からシルバーへ(鋳造)
形を作ったら石膏液の中に沈め、溶かしたシルバーを流し込むための石膏型を作ります。
石膏型は電気炉で半日以上かけて焼き固めます。
沈めた蜜蝋は電気炉の中で燃えてなくなり、蜜蝋で作った形の空洞ができます。
この空洞の中に溶かしたシルバーを流し込むことで、蜜蝋で作った形のシルバーが作られます。
流し込んだシルバーが熱いうちに型ごと水の中に入れて、型を壊して取り出します。(毎回とっても緊張します…)
この工程で得られたものに必要であればパーツや石を取り付け、研磨して作品の完成です。
profile
37JEWELRY(ミナジュエリー) 主宰
ジュエリーデザイナー Mina
1983年 愛知県生まれ
幼少期から手仕事に興味を持ち、お菓子作りやフェルト小物作り、ビーズ細工などあらゆる事に挑戦。
宝石店のチラシを使ったお店屋さんごっこに夢中だったのは、ジュエリーデザイナーになるための伏線だったのか…?(と思ってみたりして)
学生時代に家族ぐるみの付き合いであるレザークラフトの作家に連れられて訪ねたギャラリーで、シルバーアクセサリーの個展を見て彫金に興味を持つ(が、体験教室に行くものの、興味を持つだけで終わる)。
この頃、カリグラフィーにとても惹かれて、関連する書籍をよく読んでいた事が影響しているのか、今はフォントを眺めるのも好きである。
美容、ファッション、化学のどの分野に進むか迷った挙句、化学の分野の職に就くが、諸事情が重なってどうしていいかわからなくなるほど悩むことになる。
しかし、ちょうどその頃、不思議な縁でせん彫金工房を紹介され、森千明氏に師事する事を決める。
森千明氏の指導の元、彫金技法の習得及び作品作りを開始するとともに、状況も好転。
途中、祖父母の介護も加わって、多忙かつ精神的に大変な時期もあったが、作品作りにのめり込む日々を送る。
2013年から作品を発表し始め、師匠である森千明氏に背中を押される形で2014年10月 初個展「軌跡」を開催し、その後独立。
以降、個展を開催し、作品を発表している。(現在は新型コロナウイルスの影響を考慮し自粛中)
持ち前の旺盛な好奇心と行動力(面白そうだと思ったらやってみたい)、そしてものにするまでやり続ける根気強さが功を奏し、また、人にも恵まれて、写真やデザインを始めとした他分野の知識及び技術も習得。
現在は、「美しいもの、きれいなものを作りたい」(そして私もそうなりたい…)という考えの下、日常で目にするあらゆるもの(風景、動植物、人、造形物、文字などジャンル問わず)から「美しい、きれい」を見つけ出すこと、また、「美しい、きれい」とは何なのかを考えることがライフワーク。
◆出展履歴
2013年 作家活動をスタート、彫金 三人展(アルティストビラージュ / 岐阜県多治見市)
2014年 個展「軌跡」(風の実 / 愛知県江南市)、個展を機に独立
2015年 個展「present」(スペースU / 東京都目黒区)、二人展(コントレール / 愛知県江南市)2017年 個展「約束」(スペースU / 東京都目黒区)、個展「pieces」(風の実 / 愛知県江南市)、4人展(コントレール / 愛知県江南市)
2018年 個展「宝島」(スペースU / 東京都目黒区、風の実 / 愛知県江南市)
2019年 個展「その傍に」(風の実 / 愛知県江南市)
2020年 個展「雨上がり、虹」(オンライン)
2024年 個展「岐路」
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